精神的な愛　霊的な愛

人間の心から生じる｢精神的な愛」は、自分自身のために他者を愛するが、｢霊的な愛」は、キリストのために他者を愛する。｢精神的な愛」は、他者との直接的なふれあいを求め、他者を「自由をもつ者」としてではなく、「自分につながれている者」として愛そうとする。そしてあらゆる手段を尽くして、自分の利益のみを得ようとし、自分のために相手から何かを手に入れようとする。それゆえ、人間の精神的な愛は、｢敵」を愛することは出来ない。そして、その欲求を満たすことができなくなってしまうと、そこで終わりを迎え、憎悪、軽蔑、中傷に変ってしまう。しかし、まさにそこに｢霊的な愛」の始まる場所がある。｢霊的な愛」はキリストから生まれ、キリストにのみ仕えようとする。｢霊的な愛」は何かを求めるのではなく、仕える者があるゆえに、この愛は｢敵｣をも兄弟のように愛する。この愛は｢兄弟｣や｢敵」に根源を持つ愛ではなく、ただキリストと彼の言葉から生まれ出る愛なのである（ボンヘッファー）。

「戦車を誇る者もあり、馬を誇る者もあるが　我らは、我らの神、主の御名を唱える」（詩編20編）。