賜物
賜 物
昔、アイルランドの貧しい青年がアメリカに移住しようと決め、その費用を稼ぐために熱心に働きました。彼は、稼いだお金で、船の三等席のチケットをやっと手に入れることができました。船のレストランを利用するまでのお金はなかったので、旅の間の食料はパンを買いました。旅の間、お腹が空いたら買ったパンを少しずつ食べて何とか耐えようとしましたが、大西洋を渡る長い旅は、空腹との闘いの連日でした。船が目的地に着く前日、彼は船のレストランに向かいました。あるだけのお金を全部払って、最後の食事だけは贅沢に食べたいと思ったのです。レストランの食事は涙が出るほど美味しかったです。お腹いっぱいいただいた彼が食事代を払おうと会計の前に立つと、レストランのウェイターは、「レストランでの食事は無料です。食事代はチケット代に含まれています」と、彼を見つめて言うのでした。
この話は実話で、ずっと昔どこかで読んだ話ですが、いつ思い出しても悔しがる青年の顔が思い浮かびます。そして、私たちの人生の歩みと似ていると思いました。
私たちには神さまから与えられた豊かな賜物があります。この世に生まれた時から、その賜物を用いて豊かな日々を生きるように与えられたものです。それは、私の人生にすべて含まれています。この青年の船旅のチケットのようなものです。 しかし、私たちは、「私には何もない」、「あの人はいろんなことができていい」と人と比較したりして、自分に与えられている豊かなものに気づかないでいる場合があります。さらには、一緒に生きるようにと贈られた家族や隣人、友人、仕事の仲間・・・いろいろな関係に結ばれて豊かなのに、その人たちのダメなところばかりを見つめて不満を言って、関係を危うくしてしまいます。神さまから与えられた賜物というチケットを十分に使わずにいるのです。
11月、大地はたくさんの実りを生み出し、一年の中でいちばん豊かなときです。28日からはアドベントが始まります。場を整えて、新しい気持ちで救い主を迎えるためにも、勇気を出して、与えられているたくさんの賜物に心を大きく開きましょう。アイルランドの貧しい青年の船旅のように、私たちの人生の道のりも片道切符です。渡ったら戻ってこないのです。一度しか通らない道ですから、新しい出会いや気づきは常に豊かです。